インタビュー

2025.03.17

中国料理店「茶禅華」川田智也さんが考える、料理技術で変えたい社会

2021年、日本では初の、中国料理での三つ星を獲得した「茶禅華」。日本料理を学び、料理哲学に「和魂漢才」をかかげる川田智也さんが願うのは、みずからの料理技術で社会を少しでも良い方向に変えること。このたび、料理人と企業をつなぐウェブプラットフォーム「TasteLink(テイストリンク)」に加わっていただくにあたり、いま興味のある場所や調理法、また料理を進化させるために注目する技術について語っていただきました。

料理の技術で社会を良くしたい

戸門:レストランと企業が連携する際に、どのような分野に興味がありますか?

川田:自分が料理をすることで社会が良くなるようなことに携わっていきたいですね。食料問題など、日本の山や海がもっと豊かになってそれによって人々が豊かになっていくという、そんな循環のなかに新しい仕事があるといいなと思います。日本は自給率が低いにも関わらず廃棄率はすごく高い。その廃棄をいかに減らしていくか、そこに自分の料理人の使命もあると思っています。

戸門:そのように、社会貢献といいますか、食を通して世の中の課題を解決していきたいと思うのはなぜですか?

川田:究極的に美味しい料理を作るためには皿の上のことだけを考えるのではなく、生産者さんがいて健全な地球環境があることが大前提になると思うからです。

たとえば海産物に関して「未利用魚」という言葉がありますが、これは人間が魚に勝手に価値をつけているだけですよね。また山の方でいうと、鹿やイノシシを仕留めたあとの処理が悪くて殺処分にせざるを得ないようなものもちゃんと処理すればおいしく頂けますし、野菜も規格から外れたものも料理に使っていく。そういうものが廃棄にならず循環していくようになってほしいと思いますし、それでおいしいと思っていただければ皆さんもそちらに目を向けてくれると思います。そういうところにこそ自分の中国料理の技術を使っていきたい。

「茶禅華」ではいま、テイクアウト用として麻婆豆腐などを販売していますが、そういう形でレストランで利用する以外のところでもちゃんとした品質が保たれたものを作って、一般のご家庭に出していけるように取り組んでいけたらいいなと思います。

戸門:興味がある食材や調味料はありますか?

川田:昆布はすごく興味ありますね。うちはすごく昆布を使うんです。昆布だしもそうですし、魚の焼き物をやる時に昆布締めにしてから焼くと、圧倒的に魚の質が上がります。

戸門:中国料理ではあまり昆布使うイメージがないですが、川田さんがかつて「日本料理 龍吟」にいらっしゃったことは関係していますか?

川田:そうですね。「龍吟」にいたこともそうですし、台湾に住んでいたこともありますね。台湾は思った以上に昆布を使うんです。日本統治時代があった影響もあるのか、台湾は昆布料理がいろいろあります。

あとは調味料ではないですが水ですね。「茶禅華」では、濾過機能が異なる浄水器を3種類、料理ごとに使い分けています。濾過といっても単に不純物を取り除けばいいというものでもなくて、たとえば逆浸透膜フィルターをかけるような種類の浄水器だと、料理の味がフラットになってしまうんですよ。だから浄水器も奥が深いというか、興味があっていろいろ試しています。

調味料を使わず料理の味を変える薪焼きの「尊さ」

戸門:食材を支える水や調理道具も、確かに、料理の味に大きく関係してきますね。

川田:火入れにおいて薪焼きも興味深いですね。羊肉が顕著だったんですけども、薪で焼くとバターのような風味というか、全く別物になったんです。何だこれはと驚きました。しかもブナとか楢とか、木の種類によって、まるで調味料を足したように食材の味が変化していく。

炭で焼いた場合は、ストレートに食材の美味しさが出せます。酸素を遮断して安定的に素材感を出せるから、素材そのものを表現していく日本料理にとても合っている。薪は逆にそこに木材の水分と火が食材と調和して調味料を足さずに味を変化させていくという、とても面白い世界だなと思います。

お茶も同じで、一種類の植物の発酵段階を変えるだけで緑茶、白茶、紅茶、黒茶といろんなお茶になりますよね。その、自然のものを調味料を介さずに味を変えるというところが尊いというか、崇高なイメージを感じます。

僕は日本の歴史の中で、縄文時代がとても興味があります。あの頃は木の実を採取しながら肉は薪で焼いていろんなものを食べてたんじゃないかな。原始的な部分にあらためて目を向けることによって、さらなる文化発展に繋がるんじゃないかとも思ったりしますね。

戸門:お仕事の時のコックコートや靴には何かこだわりはありますか?

川田:靴の中敷きは気に入ったものがあります。「オーソティクス」という商品で、自分の足の構造にあった中敷きを作ってもらうんです。中敷きとしてはとても高価ですが、足の疲れや足の痛みがなくなって、とても調子がいいですね。

コックコートは動きやすさ重視です。中国料理は調理の動きが激しいんですよ。あとは汗をかくので通気性と吸水性が大事です。黒が好きなので、基本的には全部黒で、調理場のものを全部黒にしたいぐらいです。黒を着るとすごい精神が統一集中されるという感覚がありますね。

中国と日本をつなぐ場所「沖縄」の魅力

戸門:先ほど台湾に住まれていた話が出ましたが、東京以外の場所では、どういう国や地域に興味がありますか?

川田:いま最も興味ある場所は沖縄です。先日イベントで、沖縄の首里城内郭の瑞泉門という門の前で料理を作らせてもらったんですけども、とても興味深かったですね。沖縄の食材には面白いものがたくさんあります。東京から遠く離れてほぼ外国という感覚でした。

琉球王国は中国と日本の間に挟まれていろいろな出来事があった場所ですし、料理哲学として「和魂漢才(わこんかんさい)」を掲げる「茶禅華」の世界観を表現するのには、とても良い場所だと思っています。

知らない食材もたくさんありました。ハーブや香辛料も独特で、たとえば長命草という草があって、それをクラゲであえたりとか、面白かったですね。ああいうものをもっと知りたい。沖縄は北から南まで全然違って面白いですね。さらに石垣島や宮古島など島によっても違う。その多様性をもっと掘り下げてみたいと思っています。

Text by 星野うずら

川田 智也のプロフィール画像

中華料理・茶禅華

川田 智也

Tomoya Kawada

栃木出身の「茶禅華」オーナー。日本の食材を活かした中国料理を提供し、ミシュラン3つ星を獲得。「真味只是淡」という信念のもと、シンプルで奥深い味わいを追求。中国料理に日本人ならではの解釈を加え、国内外で高い評価を得ている。食のイベントにも参加し、グローバルな活動も行う。

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