
インタビュー
2025.03.14
西麻布「山﨑」山崎志朗さんが考える、
世界の中の「日本料理」
2018年に西麻布に開業後、またたく間に予約困難店になった「山﨑」。若くして人気店を作り上げた店主・山崎志朗さんが挑む次のキーワードは「海外」。このたび、料理人と企業をつなぐウェブプラットフォーム「TasteLink(テイストリンク)」に加わっていただくにあたり、「テイストリンク」を通して取り組みたい企業との協業や、今後「山﨑」を海外にも通用するブランドにするためにいま考えていることについて語っていただきました。

料理人と企業をつなぐ白衣・シャツ・シューズ
戸門:レストランと企業が連携するあり方として、お持ちのアイデアはありますか?
山崎:たとえばですが、僕たちが毎日着る白衣に、そのレストランに対して応援したい企業さんが、企業のロゴを刺繍してスポンサード(協賛)をいただくという形があってもいいのかなと思っています。たとえば、僕が全日空の機内食を作りますとなったら、白衣にANAのロゴが入っているといいですね。当店の白衣はトレーサビリティが明確なコットンを使っているので、白衣のコストはかなりの額になります。白衣は消耗品でもあるので、スタッフ全員分の年間数十着の白衣をちゃんときれいな状態で渡してくれるととても嬉しいです。
戸門:スポーツ選手のユニフォームにロゴが入っているみたいな感じですね。
山崎:そうです。白衣だけではなくて、こんな感じで仕込み中に着るシャツなどもありがたいです。国内外でシェフとコラボしたりする時は「仕込み中はこんな感じでやってます」みたいに、Instagramにアップしたりするので、営業中以外で着ているものもゲストやファンの目に触れる。相手企業さんの理想としては、食品と直接は関わりないけどちょっと関わっているみたいな感じだといいなと。

海外に出て日本料理全体を見つめ直したい
戸門:今コラボの話が出ましたが、山崎さん、コラボを海外で多くなさっているイメージがありますが、どんな意味合いや意図で出かけておられますか?
山崎:このお店ができてからそろそろ6年になります。一般的に10年ぐらい経ったら、移転という選択肢がちらつきますが、その場合、現物件の処遇が問題になります。たとえば姉妹店にした場合、店のブランドが薄まるようなことはやりづらい。それならいっそ海外でやった方が将来的にもいいのかなと思ったんです。
理由は将来的にも日本以外の可能性が開けるというのと、あと、僕自身が他の方より5歳くらい早く有名店の仲間入りさせてもらったので、その5年をお金を貯めるだけに使うのは非常にもったいないと思いました。もちろんお金は大事ですけど、この5年という時間こそ財産のようなもので、それをいかに有効に使うか。体力もある今のうちに海外に挑戦
できるのは、残り時間が多い分、応援してくれる人も多くなるのではと思っています。
戸門:海外では、どういう国や地域に興味がありますか。
山崎:ニューヨークとロンドンはやって楽しそうな気がします。アジア圏も、ビジネス的にはとてもいいと思うんです。円が安いという理由でわざわざ日本に食べにお越しになってくださる方に対して食材もあまりストレスなく似たようなものが使えるのと、何よりも、日本と距離が近いことは往復しやすい点でメリットです。でもそこに5年を使うよりは、先にニューヨークとかがいいかなと。どちらかというと先にきつい方をやりたい。山登りと一緒です。
戸門:海外にチャレンジしていくにあたって、連携したい企業やブランドはありますか?
山崎:航空会社はみんなが知ってるブランドですからとてもいいですし、その他だとたとえば実際にいま履いているオニツカタイガーのように、世界で戦える日本のブランドがやっぱりベストです。このオニツカタイガーは縫製がすごく丁寧で、痒いとこに手が届く感じというか、この細部がしっくりくるんですよね。

戸門:もし何か1つだけ日本の食材を海外に持っていくとしたら、何を持っていきますか?
山崎:味噌ですね。たとえば白味噌は、入れればとりあえず全部日本の味になる。白味噌は面白い食材で、料理にはもちろん、デザートにも使える。
海外だと昆布はもうどこかで諦めなくちゃいけない。醤油は、魚醤がどこかにあるから代用できそう。鰹節も、他の魚があれば、何かしらのストックは取れると思うし、…だけど味噌はやっぱり他にない感じがするというか、代用品は難しいなという気がしますね。
戸門:興味がある食材や調味料はありますか?
山崎:日本はいい場所だと思うし、日本料理はすごく作りやすい。僕の持論で言うと、日本の食材や調味料が全くない中でも日本人が作ったものなら、最終的に大体日本料理と言っていいかなという感覚なんですよ。なので逆に、全く醤油などがない日本以外の国で、日本料理をゼロから作るのは逆に楽しいと思うんです。
海外において、数日間のコラボイベントではなく何年も店をやっていくには、やはり地力が必要になります。だから、食材や調味料をはじめとする日本料理全体を、海外に出ることであらためて学び直すことになるんですよ。「味噌って自分でも作れるんだっけ?」みたいな。そういうふうに外側から日本料理を見ることによって、自分たちが本来作るべきものがよりクリアに見えてくるんじゃないかと思っています。
戸門:一般の方が家庭で料理をするにあたって、仕事で忙しいことなどから、苦痛がある人たちがたくさんいると思います。その苦痛を減らすためのアイデアがあれば教えてください。
山崎:じっくり何かを煮ようというときに、ガス台の前にずっといるより掃除したい人もいますよね。時間がない中で美味しいものを作るときに圧力クッカーはおすすめです。それなりの値段しますけど。料理をちゃんと作りたい時って蓋が必要なんですよ。和食は蓋がないイメージですけど、蓋がないと味が芯まで入らなかったり、生煮えだったりします。家庭の少ない火口で料理を美味しく作るときに必要なのは蓋なんです。

店の外での仕事を通して、自分の視野を広げる
戸門:食×〇〇みたいな組み合わせで、こんなことをやりたいというアイデアはありますか?
山崎:すぐに実現できそうなものでいうと、ホテルなど宿泊施設などの料理の監修ができたら嬉しいですね。いろんな地域に出かけていく、その地域ならではの事情にアジャストすることで、僕自身の学びにもつながると思うので。
あるいは、旅行という体験をゲストに提供する、あるいは酒蔵さんや器の作家さんのような、伝統工芸の人たちと一緒にコラボをやるのもいいなと思います。伝統工芸の担い手も高齢化が進んで、その次の世代を僕らの側がサポートしたいなと思う人たちがいます。そういう人たちと一緒に、40~50人ぐらいの大掛かりなイベントで料理を作って、伝統工芸に触れる体験をしてもらうと、きっと面白いものができると思っています。
Text by 星野うずら

日本料理・山﨑
山﨑 志朗
Shiro Yamazaki
1987年東京都出身の料理人。赤坂「もりかわ」で8年間修業後、2015年に「霞町かしわ割烹 しろう」を開業。2018年に「山﨑」として西麻布に移転し、開店3か月でミシュラン1つ星を獲得。伝統的な和食に革新を加えるスタイルが特徴で、フレンチの技法も取り入れる。酒とのペアリングにも精通し、素材の産地調査や生産者との交流を重視。海外展開にも意欲的で、和食の新たな可能性を追求し続けている。